MAGIC:the Gathering その3(フォーマット①)
せてさて、前々回にてマジックの魅力、前回はマジックの問題に触れた。
今回はその問題をいくらか解消、緩和できる制度「フォーマット」について筆者なりに記載する。
<「フォーマット」の必要性>
正確な話は公式サイトなどを参照頂くとして、簡単なイメージとしては「階級制」である。
ボクシングや柔道などでも採用されているが、広く考えれば多くのスポーツで年齢帯により区分けして競っていることがわかる。
体重や小/中/高校、大学~一般など、まとめて競うには隔たりが大きすぎる場合に採られる措置だ。
一方マジックは年齢や体格に左右されるものではないが、隔たりは確かに存在する。
“カード資産”だ。
例えば最初期から続けていてカードをコンプリートとしている人と、最近始めた人とでは
制限なしでデッキを構築した場合に腕前どうこう以前に勝負にならない。
お金をかければいい、新品でなくとも中古で買えばいい、となるかもしれないが
強くて魅力的なカードのなかには、既に絶版のため絶対数が限られ、入手が困難なものも多く存在する。
加えてマジックの黎明期には“ブッ壊れ”なカードも含まれているので、デッキが固定化したり一瞬で終わったりする。
何でもあり、が楽しいとも限らないのだ。
(今のマジックはたくさんの試行錯誤のうえに成り立っているのである)
<「フォーマット」の概要>
マジックにおける階級制は「フォーマット」といい
使用できるカードセット(基本セットやエキスパンション、特殊セット)によりいくつかの分類が存在する。
・スタンダード
・パイオニア
・モダン
・レガシー
・ヴィンテージ
それでは簡単に確認していこう。
<スタンダード>
発売後2年ほどの基本セット、およびエキスパンションのカードを使い対戦するフォーマット。
時期により使用できるカードセットが移り変わっていくため、最も変化の大きなフォーマット。
その時流通しているカードを使った構築戦なので、カード資産という意味では経験年数の影響が少ない。
もちろんデッキの構築そのものや対戦時のプレイングなどは経験や地力の差が出るものの、
比較的初心者が始めやすいフォーマットだと思う。
デッキ全体の金額にしても、他の環境より安く済むのではないだろうか。
ローテーションの度に古いカードは売る、なんて方もいるかもしれない。
パックやボックスから自分で引き当てたい派は、開封済みカード量がとんでもないことになるため
常に保管場所の確保に悩まされることになる。
※スタンダード関連のカードセットは年に4回ほど発売され、ローテーションで環境が常に変化する。
<パイオニア>
次に、スタンダードよりも使用できるカードが多く、ローテーションがない「パイオニア」だ。
比較的新しいフォーマットで、制定は2019年。
2012年10月発売の「ラヴニカへの回帰」以降のカードセットを使用できる。
ローテーションがないので、スタンダード環境で使用できなくなった思い入れのあるカードを、継続して活躍させることが可能だ。
なお「ラヴニカへの回帰」ブロックは、「ショックランド」と呼ばれる2色土地10種が再録されたエキスパンションであった。
それぞれ2つの基本土地タイプを持ち任意で好きな方のマナを生み出すことが出来るが
(ここまでは、かの「デュアルランド」と同じ)、
アンタップインさせるためには2点のライフを支払う必要があるという前のめりな土地だ。
筆者は初収録時(「ラヴニカ:ギルドの都」で初収録)はマジックから離れていたので、
「ラヴニカへの回帰」ブロックのボックスを買い漁り揃えた覚えがある。
※当時、再録前は大変に高額だったとか。
ちなみに筆者のカード資産的には、ちょうどパイオニア環境をカバーできている。
そんな数年前から続けているような人にも向いていると思う。
また期間的には「友好色フェッチランド」(例えば「平地」か「島」を“持ってこられる”「溢れかえる岸辺」)が再録で含まれるが
フォーマット上の「禁止」指定により使用できない。
そのためデッキ構築時の多色化の制約がやや強い。
※「タルキール覇王譚」に再録された友好2色のフェッチランド。モダン環境との差別化故か、フォーマット制定当時より禁止。
<モダン>
こちらも「パイオニア」同様ローテーション無しだが、カードプールの広さに大きな違いがある。
「モダン」はパイオニアより古くからあるフォーマットで、「第8版」以降のカードを使用することができる。
よく知られていることだが、それ以前のカード枠とは大きくデザインが異なるので、見た目でも区別が付きやすい。
フォーマット名称も“近代的な”となっている通り、新しさを意識したかったのだろう。
(一方で再録カードの旧バージョンを使用する場合、フォーマットイリーガルと勘違いされないよう注意が必要)
ここで触れておくと、カードの枠デザインは「第8版」にて大きく変わり、その後「オリジン」でも若干変わった。
筆者は密かに①旧枠(~スカージ)、②新枠(第8版~)、③最新枠(オリジン~)、と呼称していたため、
前記「パイオニア」が制定される前は③最新枠以降のフォーマットができると予想していたが、そんなことはなかった。
特殊土地である「フェッチランド」を使用できる環境であり、フェッチ+ショックはモダン多色デッキの嗜み。
その他、多種多様な特殊土地を用いることができ、構築の幅が広いフォーマット。
この辺りからそれなりにデッキの値段が高まる印象。
※対抗色のフェッチランドは「ゼンディカー」にて初収録。
<レガシー>
「レガシー」もまたローテーションがないが、モダンとの違いはなんとすべてのカードセットを使用できることである。
スタンダード環境を経た基本セットやエキスパンションの他、統率者セットなどの特殊セット(今回は触れない)に収録されたカードも使用できる。
いにしえの強力なカードは、まさに“遺産”。
ただし、前述フォーマットもそうだが「禁止」指定のカードが存在し、例えば俗に「パワー9」と呼ばれるカードは使用できない。
なおカードプールに期間的な制約がないことから、後述の「ヴィンテージ」とあわせ「エターナル」と呼ばれることもある。
「デュアルランド」を使用できるのもここから。
この辺りのフォーマットになると、第一線のデッキの値段は軒並み非常に高額になる。
ただし、環境がある程度固定化されているため、一度揃えてしまえばずっと使い続けられる面もある。
(参考までに、主要デッキをまとめている方のサイトはこちら→https://manuke.jp/mtg-legacy/)
<ヴィンテージ>
すべてのカードセットを使用できる点はレガシーと同様だが、大きな違いは「制限」カードの存在。
「禁止」カードではなく、デッキに1枚しか入れられない「制限」カードによりゲームを成立させている。
つまり、このフォーマットに限っては(ほぼ)どんなカードでも1枚までなら使用が許される。
かの「パワー9」を使用したいなら、このフォーマットを選択することになる。
(持っていれば、だが)
値段とかそういう次元ではなく、デッキ1つが車と同じ価値というのが笑いたくても笑えない話。
環境が違いすぎるので、スタンダードデッキでもまぐれで勝つこともある、かもしれない。
以上、カードセットによるフォーマットの分類を紹介した。
もっと正確な情報や「禁止」カードなどは公式サイトなどを参照頂きたい。
次回は上記以外のフォーマットに軽く触れて、終わりにしようと思う。